三ツ松新'sブログ

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2012年03月03日

グローバル化する日本語

最近はtwitterやFacebookがでてきてすっかりブログを書くことが少なくなった。ただブログがなくなるかと言えばやはり各々コミュニケーションの質と量に違いがありうまくすみわけしつつあるようだ。

言語その物にもそのような概念があるようで、中身がわからなくても速く聞こえる言語があるのはなぜだろう?という疑問からリヨン大学が言語の速度と密度について調査した。

扱った言語は中国語(マンダリン)、スペイン語、英語、日本語、ドイツ語、ベトナム語、フランス語、イタリア語の8か国語。これらの言葉を母語に持つ男女59人に同じ意味の文章を母語で読ませて一分あたりの音節の数をもとにスピードを計った。その結果最も早かったのは日本語(7.84;音節/秒)で一番遅かったのは中国語(5.18)。因みにスペイン語が7.82で英語が6.19。そもそも母音と子音でなりたつひらがなが最小単位の日本語は音節が多くなるのはわかる。

また速度以外に密度を測る方法として音節各々が持つ意味に重みづけをした。例えばBlissのような単音節の言葉の音節は重要度が高くJubileeの真ん中のiはあまり意味を持たないので低くした。この部分は機械的にやるのは難しいと思うので疑問の余地もあると思うが結果最も密度が高い言語はベトナム語だった。そしてそれを1.00とした場合最も低いのは日本語の0.49。他には中国語が0.94、英語が0.91、スペイン語が0.63。

ベトナム語が最も密度が高いというのはおもしろいと思うが、古代ベトナム語の表記があまりに複雑だったため、一般の民が使えるようにフランス人宣教師が17世紀に今のローマ字表記を作った。おそらくかなり効率的につくられたのだろうと思うがおかげで識字率は発展途上国では群を抜くので成功したといえるだろう。

さてこの内容はタイム誌の記事で紹介されていて、速度や密度に違いあれど結果同じようなアウトプットだというハッピーエンド的な結論だった。ただもう少し突っ込んで見たほうがおもしろそうなので単純に速度と密度を掛け合わせてみたがその結果が以下の通り。

英語 5.63
スペイン4.93
中国 4.87
日本語 3.84

英語が世界の公用語になりつつあるのは経済力だけではないかもね。そしてこう見るとわが日本語はなんとなく見劣りする。

いやいやそんな効率主義だけではだめだ!!日本語のもつ深さやわびさびが含まれてないじゃないか!!お前は何にもわかっちゃいない!!そもそも日本語というのはだな・・・・・・・
コクリ、コクリ←私w

という化石おじさんの声が聞こえてきそうだ。因みに私も誰が見てもおじさん世代に突入したので最近はおじさんの悪口がいいやすくなってきた。お前もだろうという突っ込みはとりあえず棚に上げておいてw。

ただオヤジのたわごとかと言えばそうでもなく確かに日本語の持つ深さのようなものは存在する。アメリカの文化人類学者のエドワード・ホールというおじさんがハイコンテクストとローコンテクストという概念を1970年代に提唱している。そしてグローバリゼーションがすすむ中その概念はますます重要になってきた。詳しく知りたい人はググれ、ただ一言でいえばハイコンテクストは阿吽の呼吸があるような言語だが曖昧。ローコンテクストはないがダイレクト。言うまでもなく日本語は前者に分類される。

そういえば私の古巣のP&Gでもグローバリゼーションはかなり早く進んでいて随分前からこの言葉は使われていた。そう言えば会議等でちょっと言い過ぎたかなと反省していた日本人に対して昔の上司が "Better to be rude than to be misunderstood" (理解されないよし失礼なほうがまし)と言っていた。まさにローコンテクストの考え方でこうでないとなかなかグローバルな環境での意思疎通は難しい。

社員同士の意思疎通だけでなく、消費者調査においてもこの概念はかなり重要だ。購買指数を測定する調査でもかなりの高得点をあげた南米でまったく売れなかったり、必要以上に低い評価が日本で出たりといろいろと失敗もある。正しい翻訳をしてもなかなか他言語での比較は非常に難しい。だから今でも幸福指数を比較するような国際調査を見るとかなり懐疑的。とう言うか信じてない(いっちゃったw)。

これまで2冊ほどの翻訳本の解説を書いたがどちらも自分で翻訳をしなかった理由はこのような経験と関係する。これまでの2冊はともに高遠女史が翻訳したが彼女は英語以前に日本語の言語能力が半端なく高い。こんな表現どうやって日本語に直すのだろうと私なんかが悩むところの手腕は見事だと思う。今年出版されるものが2冊ほどあるがそちらも解説のみの予定。

コンテクストにおいては有利な面があっても効率だけを見ればどうも見劣りする日本語。しかしグローバリゼーションのスピードについていくために日本語も確実に進化していると思う。ニュースの読み上げるスピード一つでもここ50年で30%近く速くなっている。因みに磯村さんと久米さんでは倍以上の開きがあったそうな。久米さんは早口で有名なので単純比較はできないが、少なくともあのテンポが受け入れられた。これまで話すスピードを上げてきたと推測できるが、主要言語ではもはや音節のスピードが最速なのでこれ以上速くできるかは不明。

そこでもうひとつ(化石おじさんが大っ嫌いっぽいw)昨今の若者言葉に見られる省略表現がある。パソコン、マクド(マック)など外来語なら昔からあったけど、最近は日本語その物も多い。例えば「あけましておめでとうございます」を「あけおめ」と言ったり、「誕生プレゼント」が「タンプレ」。AKB48なんかある意味究極で秋葉原=アキバと省略してかつアキバ=AKBと母音まで落とすことでパソコンのローマ字打ちなら三分の一になっている。さきほどの速度と密度を掛け合わせた数字、英語が5.63日本語が3.84だった。秋葉原だけを見るとアキバにすると6.91でいきなり世界一に躍り出る。そしてAKBという表記なら11.52ともはや上位圏外。

そもそも日本語というのはだなあ(www)漢字、ひらがなカタカナがあって極めて柔軟性、受容性の高い言葉だ。省略言葉をもっと進め、併用することでハイ・ロー両方の文化に対応できるポテンシャルを持ち合わせていると思う。Simple Japanese のような言語体系があってもいいだろう、というかすでに進みつつある。

そして我々は今税金で何をすべきかと言えば全力で翻訳こんにゃくをつくることだ。知識社会において言語はインフラなのでよくわからん橋つくってる場合ではない。日本語がローカルにある深さとグローバルにある幅両方に対応できる言葉になる可能性は十分にある。

最後にタイトルとは関係ないが、タイム誌の記事中の表現に and one not so common one: Vietnamese.(あまり一般的ではないがベトナム語)があった。そしてフランス語とイタリア語より話す人間の数は多いのになんでベトナム語は一般的じゃないのだ!というコメントがあった。かなり納得したので本文中の言語は参照記事とちがい話す人の数が多い順に並べてみた。グローバルコミュニケーションをさらに難しくする一因やな。

ほなまた

参考URL;
http://www.time.com/time/health/article/0,8599,2091477,00.html
http://www.nhk.or.jp/a-room/qa/index.html
http://www.tbs.co.jp/research/jochi/jochi_r12.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8B%A5%E8%80%85%E8%A8%80%E8%91%89
http://www.ethnologue.org/ethno_docs/distribution.asp?by=size

投稿者: 三ツ松新 日時: 15:11 | | コメント (0) | トラックバック (0)