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未来学者アルビン・トフラー、日本を語るその2

さてトフラー氏のインタビュー記事に関する昨日のエントリーの続き。
本文中に、日本の教育システムを

アメリカ以上に、「従順で、機械的に働く労働者」を生産するシステムとなっている」
教師がもっと自由に教えられ、自ら「考える」人材が育つようにシステムを抜本的に改革しなければならない

とあるが、非常に頭の痛いコメントだ。これだけ聞いているとなんだか日本人は頭を使わないような印象を受けるが決してそうではありませんよね。もちろんトフラー氏もそのようなつもりで言っていないは重々承知しているが。

小学校の教育をアメリカで受け、ビジネスマンの基礎を外資系で叩き込まれ、現在はコテコテの日本の現場でコンサルティングと教育に携わる人間としては頭を使わない外国人も山のように見てきた。決して日本人が使わないわけではない。ただ自己主張をあまりしないためにそう見えるだけだ。

そのために自己主張を訓練して外国人とディベイトすればよいかと言えばそれは短絡的で、特殊な人を除いてあまりお勧めしない。言語のハンディーも、もちろんのことだがそれ以上に価値観や論理体系がそもそも違いすぎる。誤解を受けない程度の話術はもちろん必要だが。

ただトフラー氏が言うようにさらに自らで考える人材の育成はこれからの知識社会では必要だ。資源のない日本は加工貿易立国として長らく成長してきたが、それが逆に成功の復讐となり昨日言っていた過度な製造業重視の姿勢を強化する。これからはそうではなく新たな資源、「人財」を育てていかなればこの国の未来は暗い。

ではどうすれば良いかといえば日本人の観点から見て二つ考えるところがある。

まず一つ目、科学的に失敗から学ぶ姿勢を身に付けることだ。
いろいろな所で教えていると、とにかく正解を知りたがる人が多い。とかくビジネスにおいては、正解がある問題点なんて本来ほとんどなく、現場ですりあわせながら発見していくものだ。ただしこのすり合わせをいきばたりあったりでやってはいけない。

最も海外のMBAで教える先生から話しを聞いているところでは答えを知りたがる人が多くなったと言うのは世界的に見られる傾向のようだ。だからこそ元々経験則から学び、ボトムアップ型の論理構築をする習慣がある日本人では根付きやすく差もつけやすい。暗黙知を形式化していく不断の努力が大事だ。

二つ目は過去の良いものを活かしていく姿勢だ。
故ドラッカー氏がNHK特集の「明治」で言っていた事柄と共通するが、彼は日本が明治以降目覚しい発展を遂げたのは旧来の価値観を否定せず、ある物を活かして行ったことが大きかったという。因みに彼が絶賛していた渋沢栄一の「論語」の読み方が復刻版ででてますが、なかなかいいですよ。

学生の頃だが世界の主要国で革命を起こしたことない国は日本ぐらいだというのを聞いたことがある。明治もだから革命ではなく維新と呼ばれる。その頃はなんだか腑抜けな国民だなあと劣等感を感じた記憶があるがそれはまったくの見当違いだと今にすれば思う。革命はなんだか破壊的な臭いがする。
自然を愛し、2000年以上国を維持してきた農耕民族が維(これ)を新たにする。すばらしいことじゃないか。

今のはやりの言葉で言えばサステイナビリティーと言うのだろうが、もう何千年もやってきましたよといいたいところだ。ところが一つ目の科学的に失敗から学ぶ方法が確立されていないため、二つめの過去の良い部分を活かすことが、学問体系にならず、現状ではせっかくのノウハウも輸出できない。

加工貿易立国としてこれからは「知識商社」が必要な時代だ。今は知識の輸入業者ばかり(自戒を込めて)だがこれからの挑戦だと思う。思えばそのようなことを漠然と考えて独立したが、本当にまだ山の麓にも来ていないような気がする。

なんだか評論家みたいになってしまったが、さあ、仕事仕事(笑)。

投稿者: 三ツ松新 | 日時: 2006年07月28日 11:46

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コメント

お久しぶりです。

過度に重要視されている製造業でコンサルやっています。

いやぁ、製造業では「カイゼン」とか「ムダトリ」とか、絶対の真実と信じられている dangerous half-truth に染まっているので、製造業の現場の社員が、マニュアル主義の外資コンサルタントみたいになっちゃっているんですよね。

自分で考えて、実践して、結果を確かめて、もう一回考えるというサイクルがまわらなくなっている。一サイクル見通せてからでないと、初めてたくない、という空気が蔓延している。失敗は恥のメンタリティがそうさせるのか?

コンサルから学ぶべきは、正解をなんとかしてひねくりだす方策であって、正解ではない。正解を求めている限りは、マニュアルコンサルにムシられ続けるのは避けられないんだろうね。。。

とは、コンサルをやっていて自分で言うわけにはいかんわなぁ。

投稿者: holic | 2006年07月28日 23:13

>holicさん、
ご無沙汰です。マニュアルのメリットも多いにあるけど、前提にこれが絶対正解ではないという理解がないと弊害もまた大きい。でも日本の最高学府にいきながらマニュアル化の餌食にならなかったholicさんはえらい!(笑)。

投稿者: 三ツ松新 | 2006年07月31日 10:01

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