三ツ松新'sブログ

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オマハの賢人

最近のサブプライム問題で金融工学におけるイノベーションが発端だという批判を時折きく。マネーゲームの結末がこのごみのような問題だ。確かに他人の金で博打して、大儲けのときはたんまり礼金をとり、負けたらばんざーいし国が助けざる終えない状況に追い込むのはいかがな物かと思う。複雑な金融工学理論を駆使しているというが多くの理論はどこの工場でも使う生産管理手法と大差はない。違うと言えばもともと存在する統計用語を変な名前に言い換えてわかりにくくしてるところだろう。

確かに一部純粋な金融工学の学者もいて本当に複雑な理論も存在する。そう言うまともな人にはなんとも気の毒な時代だ。ただ今回の問題は金融工学理論が複雑だから起きたわけじゃない。単純に言えば毒の入った水と真水を混ぜて飲める水の量を増やしたのだ。確かにあるレベルまで薄めればどんな毒でも飲めてしまう。やっかいなのはそれをいい事に、毒の水をさらにたくさんつくったことと後から薄めたはずの毒が増殖してること。するはずはなかったのだが・・・・・
これって問題をあまりにも単純化しすぎだろうか。

そうはいいながら実はぼくは金融工学におけるイノベーションはいいものだと思っている。食品など一部のコモデティー商品の空売りは規制すべきだと個人的に思うけど、金融工学の進歩には賛成で過度な規制には反対だ。金融工学は学問で言えば、歴史も新しくまだまだよちよち歩きの赤ちゃんのような不完全な学問だ。

ここで学ぶべきことは金融工学が悪いということではない。むしろ本当はわからないが、わかったふりをした人が横行していることだ。

ちょっと前になるが8月28日にソープ博士に関するコラムが日経にあった。金融工学の専門家の名前に詳しいわけではないが、たまたま彼は嫁はんの母校で教鞭をとっていたので名前だけは覚えていた。

それはさておきその記事によればMITとUCアーヴァイン校にいたエドワード・ソープ博士は1995年にすでにCDOなどの投資を断っていたようだ。因みにソープ博士は「ディーラーをやっつけろ」のベストセラーで知られるブラックジャック理論の第一人者。異色の数学者であろうが、彼の理論があったためラスベガスはブラックジャックのルールを変更することになってしまった。

その後、彼は金融に軸足を動かし大成功をおさめるが、もう随分前に一線を退いている。理由はレバレッジが効き過ぎて、勝つにはあまりにも大量の資金が必要ということと、情報にウソが多いことだそうだ。
ウソは論外として大量の資金がなければ勝てないということ自体もリスクだろう。
まあ、ようはこのように金融工学を作り上げたうちの一人である、本当に分かっているソープ博士ですらとっくに手を引いている。

このような現象をオマハの賢人といわれる世界一の金持ちバフェット氏が見事に言い表している。彼のインタビューがハーバードビジネスパブリシングにまとめられているが相変わらず簡単な言葉でうまく物事を表現するなあと感心する。全然フィールドは違うがちょっとシニカルで簡潔な言い方は何となくドラッカーを思い出させる。

多少の省略ありで意訳だがバフェット曰く

これは新しくていいアイデアが一時的に間違った方向に行く自然進歩の法則で3i'sと言う。Innovater,Imitator,Idiot(革新者、模倣者、バカ)の頭文字だ。イノベーションに問題があるのではなくそのあとに続くアホが問題だ。

最初は素晴らしいアイデアが革新者により出され本当にいいと思うひとは真似始める。だけどそのうち盲目的なバカが続く。

明らかに自分よりバカだと思う隣人がめちゃくちゃやってお金を儲けていることをヒトはだまって見ていられないのだ。そして気づくとそのうちその「めちゃくちゃ」をいっしょにやっていたりする。

その処方箋としては常に真の価値を見極めること。それは真に賢いことと単なる手段の違いが見分けられる能力だ。簡単なことではないし、ものすごい自制心が必要だ。真の革新と心ここにあらずのマネごとが見分けられるか?また目の前にある絶対儲かる話でも、理屈がおかしい物を去ることができるか?

相変わらずのバフェット節であまりにも核心をついてるので思わず吹き出してしまった。もちろんぼくも公私ともども「バカ」なことをたくさんしてしまったと思うしこれからもする可能性はある。

ソクラテスが言う「無知の知」という言葉を再認識してしまうけど知っていると思いたいのは半ば人間の性。努めて自分が無知だと思わないといかんね。

参考;
http://discussionleader.hbsp.com/taylor/2008/10/wisdom_of_warren_buffet_on_imi.html?cm_mmc=npv-_-LISTSERV-_-OCT_2008-_-LEADERSHIP

投稿者: 三ツ松新 | 日時: 2008年11月04日 11:28

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コメント

真の価値。本当に重要なことですね。
いつの間にか一人歩きしてしまう、欲望のまま迷走してしまう、そんな世界をバフェット氏が語っているのではないのかと感じました。

投稿者: ocean fire | 2008年12月05日 00:29

>Ocean fireさん、
同感です。自分ではその欲望がよく見えないでしょうからよけいに難しいですね。

投稿者: mitsumatsu | 2008年12月11日 11:47

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