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リソースセンターではシニアエクゼクティブとその候補生を対象に、イノベーションと顧客価値創造に関連するマネージメント手法や理論を短時間で学習できるような情報を提供します。私たちの専門は新規事業開発などのイノベーションコンサルティングですが、伝統的な左脳思考も事前の分析等では重視するためここでは既存のフレームワークも多く紹介しています。

4. イノベーター理論

イノベーター理論

AppleがiPodを発売してからしばらくは、これほど大きなムーブメントになるとは想像できませんでした。それが、携帯オーディオの本家ソニーなどをここまで脅かす存在になったきっかけは、Windowsへの対応にあったと言われています。その後、一気にデジタルオーディオプレイヤーが一般化したのは記憶に新しいでしょう。これを理論的に支えるのが、これから紹介するイノベーター理論です。

イノベーター理論は、1962年、スタンフォード大学の教授エベレット・M・ロジャースによって提唱された、イノベーションの普及に関する理論です。商品購入への態度を、新商品購入の早い順番に五つのグループへと分類しました。

1) イノベーター(Innovators, 革新者)

冒険的で、新商品が出るとすぐに購入する層。商品の目新しさだけで購入するため、この層が購入する段階では、商品のベネフィットが受け入れられているのかは分かりません。市場全体の2.5%を占めます。

2) アーリーアダプター(Early Adopters, 初期採用者)

流行に敏感で、情報収集を自ら行って判断します。そのため、商品のベネフィットを理解したうえで購入に踏み切ります。この層は市場の13.5%を占め、1)のイノベーターと合わせると、16%となります。他の層への強い影響力を持つアーリーアダプターは、オピニオンリーダーとも呼ばれ、商品の普及の大きな鍵を握るとされます。

3) アーリーマジョリティ(Early Majority, 初期追随者)

慎重派ですが、全体の平均からすると早めに新商品を購入します。アーリーアダプター(オピニオンリーダー)からの影響を強く受けます。34%を占めます。

4) レイトマジョリティ(Late Majority, 後期追随者)

周りが使用し始めてようやく、購入を決断します。別名、フォロワーズと呼ばれ、34%を占めます。

5) ラガード(Laggards, 遅延者)

世の中の動きに関心は薄く、最後までなかなかイノベーションを受け入れない層です。16%を占めます。

先のiPodの例で行けば、 iPodがWindowsへ対応したことにより、多くのアーリーアダプターを惹きつけて世の中の大きな流れとなり、その動きを見てアーリーマジョリティまでもが商品を手に取りました。(iMiネットの調査によると2005年8月時点でアンケート回答者の26.5%がデジタルオーディオプレイヤーを所有)。その広がり方は非常に鮮やかであり、ロジャースのイノベーター理論をサポートしているかのように見えます。

しかし実際は、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には、容易に超えられない溝(キャズム)があるのではないかという指摘が、のちにジェフリー・A・ムーアによってなされます。この「キャズム理論」については別項でご紹介していきます。

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