Resource Center : リソースセンター : ブルーオーシャン

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リソースセンターではシニアエクゼクティブとその候補生を対象に、イノベーションと顧客価値創造に関連するマネージメント手法や理論を短時間で学習できるような情報を提供します。私たちの専門は新規事業開発などのイノベーションコンサルティングですが、伝統的な左脳思考も事前の分析等では重視するためここでは既存のフレームワークも多く紹介しています。

5. ブルー・オーシャン

ブルー・オーシャン戦略

INSEADの教授であるW・チャン・キムとレネ・モボルニュによって提唱された「ブルー・オーシャン戦略」は、もともと『ハーバード・ビジネス・レビュー』で発表され、大きな反響を呼びました。従来の「競争」に基づいた戦略論からのパラダイム・シフトを促すその内容もそうですが、戦略の実施に有効な、整理されたフレームワークが好意をもって迎えられたのでした。

これまでの戦略論は、既存の市場での競争戦略であり、そこでは「血みどろの戦い」がおこなわれる、いわば「レッド・オーシャン」であった。つまり、ほんの小さな「差別化」を行うために多大のコストをかけ、どんどん利益を逼迫していく市場環境だったわけです。一方で「ブルー・オーシャン」は、そうした競争とは関係のない、ひろびろとした大海。「ブルー・オーシャン戦略」とは、「競争のない市場空間を生み出して競争を無意味にする」戦略であり、そこには多くの収益機会が眠っています。

ただし、こうした「ブルー・オーシャン」への船出には当然、リスクもありました。従来はその点を、優れた経営者の「直観」や「起業家精神」などに求めていました。「ブルー・オーシャン戦略」の優れた点は、その戦略を実施するにあたって、3つのフレームワークを使用することで、戦略の体系的な実施とリスクの低減を図ったことでした。

1)戦略キャンバス

既存の市場空間について現状把握のためのフレームワーク。競合他社が何を売りにしているのか、顧客がどのようなメリットを享受しているのかが理解できます。チャート化することによって視覚的にとらえることも重要なポイントです。競合他社に比べ、同じような価値曲線を描いているとしたら、その商品はまさに、レッド・オーシャンのまっただなかにいるといえます。「ブルー・オーシャン戦略」では、ここにまったく新しい価値曲線を描くことを目的とします。そのためのフレームワークが、「四つのアクション」となります。

2)四つのアクション

既存の価値曲線においては、差別化と低コストはつねにトレードオフの関係となっています。差別化をねらえばコストは跳ね上がり、逆に低コストをめざすと差別化要因がなくなってしまう。(従来の戦略論は、乱暴に言えば、この二つのどちらかを徹底する方向しかなかったわけです。)「ブルー・オーシャン戦略」では、差別化しながら同時に低コストも実現できる道を探るところからはじまります。そのためには、以下に説明する「四つのアクション」が重要となります。

■取り除く
業界常識として製品やサービスに備わっている要素のうち、取り除くべきものは何か?

■減らす
業界標準と比べて思いきり減らすべき要素は何か?

■増やす
業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か?

■付け加える
業界でこれまで提供されていない、今後付け加えるべき要素は何か?

この「四つのアクション」の問いによって、これまで常識とされていた業界の価値曲線とは違う曲線の可能性を探るわけです。この問の答えをさらに、次の「アクション・マトリクス」へと落とし込んでいきます。

3) アクション・マトリクス

アクション・マトリクスにある四つの項目へ、それぞれ具体的なアクションを書き込んでいくことにより、「新しい価値曲線」が見えてきます。1)の「戦略キャンバス」へと立ち戻り、発見された価値曲線を描きいれます。

こうして作成された戦略ですが、当然ですが、すべてが優れた戦略になるとは限りません。戦略が優れているかどうかを見分けるために、優れた戦略に共通する三つの特徴(1)メリハリ(2)高い独自性(3)訴求力のあるキャッチフレーズ、をあげています。(3)の訴求力のあるキャッチフレーズという条件はやや意外な印象を受けるかもしれませんが、最終的に顧客の心に響き信頼を得るようなメッセージがなければ、どんな優れた戦略も成功はおぼつかないものです。

こうして作られた戦略を用いることで、不毛な競争をさけ、買い手と自社の両方に利益をもたらすバリュー・ブレークスルーを実現できる。これが、キムとモボルニュによって示された「ブルー・オーシャン戦略」という、戦略論のパラダイム・シフトです。

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